2010年2月26日金曜日

無料という魔法

なぜ新聞や雑誌、音楽CD、ゲームソフトが売れないのだろうか。

単純に良質なコンテンツが無いからなのか?それとも世の中にモノが溢れすぎているからなのか?それもあるかもしれないが、もっと根本的な何かがある気がする。

私の憶測では、今の特に10代や20代の携帯電話/ネット世代の人たちは、デジタルコンテンツは無料が当たり前だと思っていることが大きな要因だと思う。

新聞や雑誌を買わなくても情報を取れる。CDを買わなくてもYouTubeなどで音楽を聴ける。(しかもPV付き)ゲーム機やソフトを買わなくてもモバゲーやGREEで遊べる。無料のわりにはそれなりにクオリティがあるし、自分が必要だと思った時にだけお金を払えばいい。納得がいく・・・無料という魅力にユーザーが惹き付けられているのだと思う。

予想どおりに不合理―行動経済学が明かす「あなたがそれを選ぶわけ」の著者ダン・アリエリーは、

値段ゼロは単なる価格ではない。 
ゼロは感情のホットボタン、つまり引き金であり、 
不合理な興奮の源なのだ。

という。

アリエリーはとある実験でチョコレート販売を行った。

スイスの高級チョコレート、リンツのトリュフを通常価格の半分の15セントで、どこにでも売っているハーシーのキスチョコを通常価格の1セントで販売する。お客はどちらを買うか?

結果は、通常よりも安いトリュフ(73%)がキスチョコ(27%)よりも多く売れた。

次に、それぞれ1セント下げてみた。トリュフは14セント。キスチョコは無料である。結果はどうか?

69%のお客が無料のキスチョコを選び、格安でリンツのトリュフを手に入れる機会を棒に振った。いったい何が起きたのか?アリエリーは次のように説明する

たいていの商取引は良い面と悪い面があるが、 
何かが無料になると私たちは悪い面を忘れ、 
無料であることに感動して、提供されているものを 
実際よりずっと価値のあるものと思ってしまう。 
なぜだろう? 
それは、人間が失うことを本質的に 恐れるからではないかと思う。 
無料の本当の魅力は、恐れと結びついている。無料のものを選べば、 
目に見えて何かを失うという心配はない(なにしろ無料だから)。
ところが無料でないものを選ぶと、まずい選択をしたかもしれない 
という危険性がどうしても残る。だから、どちらにするかと言われれば、 
無料のほうを選ぶ。

人は無料という魔法に惹き付けられる。
このような状況の中で、どのようなビジネスモデルを構築すればよいのか、そもそもなぜ無料で提供できるのか、別の機会に書きたい。

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