2010年3月7日日曜日

無料化するデジタルコンテンツ


最近、何かとよくメディアで取り上げられている「フリー戦略」。
以前のブログでは、顧客側にとっての”無料”について書いたが、今回は販売側の視点で書いてみる。

情報/音楽/動画/ゲームなど、ネット上にあるデジタルコンテンツは無料のものが多い。それは何故か?

クリス・アンダーソン著「フリー~〈無料〉からお金を生みだす新戦略」によると、

「デジタルのものは、遅かれ早かれ無料になる」
競争市場では、価格は限界費用まで落ちる。 
インターネットは史上もっとも競争の激しい市場であり、 
それを動かしているテクノロジー(情報処理能力、記憶容量、 
通信帯域幅)の限界費用は年々ゼロに近づいている。 
フリーは選択肢のひとつではなく必然であり、 
ビットは無料になることを望んでいる。 

という。

分かり易く言うと、音楽CDであれば複製すればするだけCD(の原材料)や流通費などの物理コストがかかる。しかしデジタル(ダウンロード)の場合はそれらのコストが限りなくゼロに近くなる。コストがゼロに向かっているということは、遅かれ早かれ誰かが無料でモノやサービスを提供してくる。そうなった場合、他社は大きく差別化を図るか、同じく無料で追随するかのどちらしかない。

では、無料の場合どう儲けるのか?

ゲームを例にとると、オンラインゲームやソーシャルゲームの無料+アイテム課金の収益モデルがある。まず無料によってユーザーを最大限獲得する。PS3などのコンシューマゲームは前払い制のため、その商品に対して支払う価値があるか否かと考えてしまうが、無料の場合はそのハードルがなくなり、とりあえず遊んでもらう=ユーザーを最大限獲得することができる。そしてユーザーをゲームの面白さで引き込ませた後に、新たなダンジョンなどの拡張機能やゲームをより有利に進めるためのアイテムを販売する。それを全体の(一般的に)10%のユーザーが課金すればビジネスになる仕組み。

ゲームは、そのゲームの面白さからユーザーに課金を促すことが可能だが、音楽はどうなるのだろう?

中国が参考になる。中国ではCDを販売しても海賊版がすぐ出回ってしまい、商売にならない。そのため、楽曲を無料にしてマーケティングの道具にし、ファンを最大限獲得する。そしてライブチケットやグッズなどで収益を得る。

ちなみに、ライブは音楽ビジネスでもっとも儲かる部分であり、ローリング・ストーンズは収入の9割をライブから得ている。

「CDが売れないからライブができない」という考えは辞めて、「ライブのために楽曲を無料で提供しファンを獲得する」という考えになれば、もっと新人アーティストが出てくるようになると思うし、短命で終わることもないと思う。

レコード会社は、中核事業としている楽曲の製作と販売事業からライブの運営やグッズなどの二次著作物、さらにはアーティストのマネージメント事業に移行すべきだと考える。

これはレコード会社だけの話しではなく、電子書籍の登場により中核事業が崩壊しつつある出版会社もそうだ。ゲーム会社も個人がゲームを作って配信できる今、将来どうなるか分からない。

デジタルコンテンツにおいて、無料化の流れに逆らうことは万有引力に逆らうことと一緒である。無料によってビジネスのあり方が変われば、企業の中核事業も変わる。その変化に対応する勇気とビジネスモデルが求められる。

関連blog:無料という魔法

0 件のコメント:

コメントを投稿